こんにちは。ゆるり訪問看護リハビリステーション多摩の管理者です。

今回は、訪問看護で「感動したこと」の2回目です。
リハビリスタッフが関わった、ある利用者さんのエピソードをご紹介します。
※個人が特定されないよう、内容は一部変更しています。

「もう料理はできない」と話していた方

その方は、骨折で入院した後、ご自宅に戻られた女性でした。
退院後は家の中を歩くのも不安定で、ほとんどの時間をベッドや椅子の上で過ごしていました。

最初の訪問で、「今いちばんしたいことは何ですか」とお聞きしたときのことです。

少し考えてから、こうおっしゃいました。
「本当は、また台所に立ちたい。でも、もう無理だと思う」

長年、ご家族のために毎日料理をしてきた方でした。
台所は、その方にとって「自分の居場所」だったのだと思います。

目標は「台所に立つこと」

リハビリスタッフは、その言葉を目標にすることにしました。

「台所に立って、お味噌汁をつくる」

筋力をつける運動だけでなく、
実際に台所まで歩く練習、
シンクの前で立ち続ける練習、
鍋を持ち上げる動作の練習。

ご自宅だからこそ、実際の生活の場で練習ができます。
台所の手すりの位置や、よく使う調理器具の置き場所も、一緒に見直していきました。
重い鍋は軽いものに替え、よく使う物は腰の高さに置く。
そんな小さな工夫も、大切なリハビリの一部です。

うまくいかない日もあった

リハビリは、順調な日ばかりではありません。

膝が痛む日。
気持ちが沈んで、「今日はやりたくない」という日。
少し良くなったと思ったら、また後戻りしたように感じる日。

そんなときも、無理に進めることはしませんでした。
今日は話をするだけの日にしたり、できる範囲で体を動かしたり。
その方のペースを大切にしながら、少しずつ積み重ねていきました。

看護師とも情報を共有し、痛みの様子や体調の変化を見ながら、運動の量を調整していきました。

ご家族にも生まれた変化

この方のリハビリを通して、ご家族にも変化がありました。

退院直後、ご家族は
「危ないから、座っていて」
「それは私がやるから」
と、ご本人が動くことに不安を感じていました。

でも、リハビリで少しずつできることが増えていくのを見て、
「見守っていれば大丈夫なこともあるんだね」
と、声のかけ方が変わっていきました。
訪問のたびに、「今日はここまで歩けたよ」とうれしそうに教えてくださるようになりました。

そして、その日が来た

訪問を始めて数か月がたったころ。
いつものようにお宅に伺うと、台所からいい匂いがしてきました。

「今日はね、お味噌汁つくってみたの」

椅子を横に置き、休みながらではありましたが、
ご自分で台所に立ち、お味噌汁をつくられていたのです。

「また台所に立てた。本当にうれしい」

そう話すお顔は、最初にお会いしたときとはまるで別人のようでした。
そばでご家族が
「母の味噌汁を、また飲めると思わなかった」
とおっしゃったとき、担当のスタッフは思わず胸が熱くなったと話していました。

目標の先に、次の目標が生まれる

台所に立てるようになってから、その方は次の目標を話してくださるようになりました。

「今度は、近くのスーパーまで買い物に行ってみたい」
「孫が遊びに来たら、好物の煮物をつくってあげたい」

一つの目標を達成したことで、「もっとやってみたい」という気持ちが生まれる。
リハビリの一番の力は、この「意欲」なのかもしれません。

目標が変われば、リハビリの内容も変わります。
屋外を歩く練習、段差の上り下り、買い物袋を持って歩く練習。
その方の「やりたい」に合わせて、リハビリも一緒に進んでいきます。

「生活の中」でのリハビリだからこそ

病院のリハビリ室では、平行棒や階段など、決められた環境で練習をします。
それも、もちろん大切なリハビリです。

訪問リハビリでは、その方が実際に暮らしている場所で、
その方が「本当にやりたいこと」を目標にできます。

台所に立つ。
お風呂に入る。
近所の公園まで散歩する。

一つひとつは小さな目標かもしれません。
でも、その方にとっては「自分らしい暮らし」を取り戻す、大きな一歩です。

最後に

「できないと思っていたことが、またできるようになる」
その瞬間に立ち会えることは、訪問看護・訪問リハビリの大きなやりがいです。

次回は、「体験してもらいたいこと」の2回目として、
生活の中で看護を組み立てる面白さについてお話しします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。