こんにちは、管理者の川上です。
同業他社の方や、利用者家族等の方にとってテーマになるかなと考えている
ゴール設定について、自論を展開したいと思います。

ほとんどの方が病院と在宅――
同じ“医療”ですが、その目的は少し違います。

病院は 「治すこと」 がゴールになりやすい場所です。
検査値を下げる、合併症を防ぐ、手術が成功する…どれもすべて、医学的な「正解」が明確にあります。

一方で在宅はどうでしょうか。

在宅で生活する利用者さんの多くは、加齢や疾患による
ADLの低下や認知機能の変化が避けられない状況 にあります。

「元気だった昔の状態に戻る」
「歩けるようになる」
「認知症が良くなる」

そういった“治ること”をゴールにできないケースは、訪問看護の現場に山ほどあります。

では、私たち訪問看護における ゴール設定 とは何なのでしょうか。


■ 正解は「本人と家族が思う“幸せな暮らし”」

訪問看護のゴールは、

利用者と家族が望む生活を、できるだけ長く、自分らしく続けられること。

医学的な指標よりも大切なのは、
「その人がどう生きたいのか」 です。

たとえば、

・毎朝、自分でコーヒーを淹れたい
・トイレだけは自分で行きたい
・最期の瞬間まで、家の景色を見ていたい

こうした願いが、その方にとってのゴールになります。

医療者が決めるのではなく、
本人と家族と一緒に対話しながら決めていく。

私たちの役割は、「治す」ではなく
“その人の人生を支える” こと。

これが、訪問看護におけるゴール設定です。


■ 「できることが減っていく」=敗北ではない

訪問の現場では、ADLが低下していく場面に出会うことがあります。

できたことが、できなくなる。
歩けたはずが、車椅子になる。
言葉が出づらくなる。

そのたびに、利用者さんやご家族は “失う悲しみ” に直面します。

そこで私たちは、こう考えます。

減っていくものに目を向けるより、今ある力をどう活かすか。

・トイレまで歩けなくなったら、ベッドサイドで排泄できるよう工夫する
・記憶が薄れていくなら、安心できる環境を整えて不安を減らす
・家族が疲弊しているなら、レスパイトや介護サービスをつなぐ

できなくなることは、決して敗北ではありません。

変化に寄り添いながら、その都度ゴールを更新していく。
それが、訪問看護の姿だと私たちは考えています。


■ 家族のゴールも、同じくらい大切に

在宅は、家族の人生も巻き込んでいきます。

家族にも、守りたい**「生活」**があります。

・夜ぐっすり眠れた
・1時間だけ外出できた
・介護に対して笑顔が戻ってきた

これも立派なゴールです。

訪問看護は看護師だけで成り立っているものではなく、
家族を含めたチーム支援 です。

ゴールが「本人の幸せ」だけに偏ると、
家族が心身ともに疲弊してしまい、結果として在宅生活が立ち行かなくなることもあります。

だからこそ、「家族の負担軽減」も訪問看護の大切なゴールのひとつです。


■ 大切なのは、「いま、この瞬間をどう生きたいか」

訪問看護のゴール設定は、たとえるなら

その人の物語を、一緒に紡いでいく作業。

そして、その物語の主役は医療者ではありません。

主役は、利用者さん。

脇役は、家族。

私たちは、その物語を支える裏方だと、そのように自負してます。